ゾンビは最高だ、と器官なき身体は歌う

1947年11月28日、アルトーは器官に対して宣戦布告を行う。神の裁きと訣別するために。「私を縛りたければそうするがいい、だが、器官ほど無用なものはないのだ。」(ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ著『千のプラトー 資本主義と分裂症』308頁) アルト…

無職の幻想と生きている手応え

以下の文章はすべて、無職として親の脛を齧りながら生きていた数年前の話である。 「ビル・ゲイツやザッカーバーグのような大金持ちも鬱病になることはあるのか?」 朝4時過ぎ、真っ暗な部屋の中で朝日に照らされた窓が白くぼんやりと浮かび上がってくるのを…

死刑とは何か。殺されなければならない囚人たち

絞首台まであと40ヤードくらいだった。わたしは自分の目の前を進んで行く囚人の、茶色い背中の素肌をみつめていた。腕を縛られているので歩き方はぎこちないが、よろけもせず、あの、インド人特有の、決して膝をまっすぐ伸ばさない足どりで跳ねるように進ん…

フォークナーが描くアメリカの暗部『八月の光』

耳をすましていると、その音楽の中に彼自身の過去を讃える声が聞こえるように思えるー彼自身の土地、彼自身の捕らわれた血に対する讃(ほ)め歌、すなわちそれは彼が生れて生きている土地の人々、何事をも争わずに喜びも破滅も逃避もできない人々への讃め歌な…

ドナルド・トランプ vs Twitter 真実の裁定者をめぐる対立

トランプ大統領 vs Twitter トランプ大統領が怒り狂っている。事の発端は米Twitter社がトランプ大統領のツイートに「ファクトチェック(事実確認)」のラベルをつけたことだ。選挙において郵送での投票は不正を防げないのだと主張するトランプ大統領のツイート…

パノプティコン化するテレワーク

ある都市でペスト発生が宣言された場合に採るべき措置は、十七世紀末の一規則によれば次のとおりであった。 まず最初、空間の厳重な基盤割りの実施。つまり、その都市およびその《地帯》の封鎖はもちろんであり、そこから外へ出ることは禁止、違反すれば死刑…

<自殺するほどマジでやっている>マーク・フィッシャーと鬱病

鬱病患者というものは、つねにあるひとつのことに自信をもっているものである。つまり、じぶんにはなんの幻想もない、ということに。 (わが人生の幽霊たち――うつ病、憑在論、失われた未来) マーク・フィッシャーはイギリスの若者が政治に無関心であることに…

村上春樹が描く青春との決別 『風の歌を聴け』

『風の歌を聴け』言わずと知れた村上春樹のデビュー作である。1979年の4月、この作品で群像新人文学賞を受賞し、その小説家としてのキャリアがスタートする。今やノーベル文学賞の候補に挙がるほどの作家の偉大なる一歩。 そして今この作品を読み返し、改め…

華倫変という漫画家と100日後に死ぬ光うさぎ (『高速回線は光うさぎの夢を見るか?』考察 )

苦しみってのはただ噛みしめるように なれていくしかないのかな・・・ これは『高速回線は光うさぎの夢を見るか?』という漫画の中のとあるセリフ。作中、岡山三奈という人物が述べる「唯一の本音」とされている言葉である。そしてこのセリフは28歳でこの世…

糸井重里の「責めるな。」から見る怒りの矛先

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な流行により、政治、経済、そして人の生活様式が問い直されている。思わぬ形で曲がり角に差し掛かった資本主義、不測の事態に混乱する政治、そしてコロナウイルスがもたらす恐怖とストレスで人々は冷静さを失ってしま…

加速する時代のヴェイパーウェイヴ

マーク・フィッシャーという批評家に出会ってからというもの、僕の頭の中は「如何にして資本主義的がもたらす憂鬱から抜け出せるか」という考えに囚われている。その応答として加速主義というものがある。加速主義とはイギリスの哲学者ニック・ランドがウォ…

ポスト真実の時代

『ポスト真実の政治』という言葉がある。 その意味について、Wikipediaによると次のような記載がある。 政策の詳細や客観的な事実より個人的信条や感情へのアピールが重視され、世論が形成される政治文化である。 昨今、SNSの発達がもたらしたものは、客観的…