小説

フォークナーが描くアメリカの暗部『八月の光』

耳をすましていると、その音楽の中に彼自身の過去を讃える声が聞こえるように思えるー彼自身の土地、彼自身の捕らわれた血に対する讃(ほ)め歌、すなわちそれは彼が生れて生きている土地の人々、何事をも争わずに喜びも破滅も逃避もできない人々への讃め歌な…

村上春樹が描く青春との決別 『風の歌を聴け』

『風の歌を聴け』言わずと知れた村上春樹のデビュー作である。1979年の4月、この作品で群像新人文学賞を受賞し、その小説家としてのキャリアがスタートする。今やノーベル文学賞の候補に挙がるほどの作家の偉大なる一歩。 そして今この作品を読み返し、改め…